白湯の息抜き

　バイト先での一こま。

　後輩の佐々木くんは、すっかりあだ名が定着してしまって、なかなか本名で呼ばれることがない。さすがにお客さんの前では名字の佐々木で呼ばれるが、“佐々木”というのがよくある名字だし、さらに同じ名字の先輩がいるためかなかなか定着していない様子。

　今日、佐々木くんと一緒に作業をしているときのこと。
　冗談交じりに私が彼のことを「そんなんだから佐々木○○はよ～……」と、フルネームで呼ぶ。
　すぐに突っ込まれるかと思ったら、

「あれ、なんか嬉しいですね。ひさびさに名前で呼ばれましたよ」
と言いながら笑う。

　なんでも佐々木くんが言うには、職場では同僚上司を問わず、どうも名前が忘れられがちらしい。
　上司には一度「佐々木……えーと（ちょっと考えてから）男の佐々木さんは……」なんて呼ばれたこともあるらしい。

　なるほど、名前で呼ばれたのがちょっと新鮮らしい。なにより、喜んでいただけたのならそれはそれで幸い。

　しかし……しかしだね。
　名前で呼ばれただけで嬉しい、っていうのは。
　ちょっと、理由として寂しすぎやしないか？

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