白湯の息抜き

　失恋したバイト先の後輩Uくんの話。
　いや、この前Uくんと話していたら
「いや白湯さん、白湯さん一回バイト辞めてまた復帰したでしょう？　だから俺のが先輩なんだよ」
　とか言われました。細かい。
　という、後輩のような先輩のような、でも年下だし先輩って感じはしないのでやっぱり後輩なUくんの話。

　長らく失恋を引きずっていたUくんですが、最近はだいぶ諦めがついてきたようで。
　いや、本人は「諦めてないよ！」とか言っていますが、ときどき「もういいよ、もう諦めたから！」とも言い出したのが最近の変化。

　たぶん、彼のなかではもう結論は出ていると思うのですよ。諦めた、と。
　見込みがないことも分かったし、長く引きずるのもよくはない。たぶん今はすでに諦めているのです。ただ、気持ちの整理ができていないというだけ。

　本人の話を聞いてもわかるのですが、彼は絶対的に恋愛の経験が少ない。
　同年代の男性と比べて、おそらく彼は恋愛経験自体が少ないのです。興味がなかったわけではない。ただ、それどころではなかったのかも知れない。
　いつか、彼と二人きりの時に聞いた話なのですが、彼の弟が昔いろいろと問題を起こしていたようで、家庭内が若干荒れていた時期があったようです。
　彼自身の問題ではなかった。ただ、いわゆる思春期の時期に彼はそういう問題に遭遇してしまった。
　恋愛をする余裕が彼にはあまり無かった。そういうことだと思います。

　なので、たぶん今の彼は理性では分かっている。
　見込みはかなり薄い。かといって未練を引きずっているのもよくないし。なにより、たぶん彼のなかではすでに諦めはついている。
　ただ、その気持ちの落としどころが見つからない。そんな感じ。


　結局は彼の問題です。
　なので外野ができることというのは限られています。当初は彼の恋愛を応援していたKくんやYさんらも、今はすでにその話はしていないようです。
　ただ、こういう中途半端な状態でうじうじしていたままというのもどうかと……。

　なので、私はもうちょっと彼をこの話題でおちょくってやろうかと思っております。
　たぶん、彼は今でもその気持ちの落としどころを探そうとしている。
　でも一人ではなかなか見つけられない。誰か、相談に乗れる人が必要です。
　でもUくんは（本人も言っていたのですが）相談が決して上手くはありません。自分の気持ちを語るのが苦手です。へたくそです。
　以前、Kくんとファミレスにいったときも、何とか相談に乗ろうとしていたKくんに対し、なかなか気持ちを語れずにいました。何を言っても、どこかはぐらかすように。

　今回の失恋をネタにいろいろおちょくるとUくんはおもしろいように反応してきます。正直おもしろいです。
　ですが、いろいろ反発したあとに、ときどきぽろっと本音のようなものが聞こえてきます。
　たぶん、彼もどこかに道を探しているはず。

　とりあえず、いまのまま。中途半端な状態で、くすぶったままでいるのはよくない。
　悩みは引きずるものではありませんって。




　あぁ、ちなみに単純に失恋野郎をおちょくるのが楽しいってのもあります。
　むこうは気持ちを吐露する先を得られ、ついでにこっちも適当に楽しめる。
　なんとまぁ、一石二鳥な！

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